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ビジネスの収益性がわかるユニットエコノミクスとは?計算方法も紹介

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ビジネスの収益性を考える方法としてユニットエコノミクスが知られています。近年スタートアップの成長可能性を判断する指標としてよく用いられていますが、単語を聞いたことがあっても意味は知らないという人も多いでしょう。本記事ではユニットエコノミクスとは何かを説明し、具体的に収益性を確認する方法について解説します。

まずはざっくり!ユニットエコノミクスとは何なのか

ユニットエコノミクスとはビジネスにおける顧客1人あたりの採算性、あるいは経済性を示す指標です。顧客生涯価値(LTV)と、顧客1人あたり獲得コスト(CAC)を使って、下の計算式で表します。

ユニットエコノミクス)= LTV / CAC

Saas企業ではLTV/CAC>3、つまりLTVがCACの3倍より大きい場合は健全と言われており、基本的にはこの比率が適正な値になっていればビジネスが成長・存続できると判断されます。

ユニットエコノミクスは投資家やVC(ベンチャーキャピタル)が投資判断をする時にもよく用いられている指標です。企業が新規事業を展開している時に追加投資をすべきかどうかを判断するには、ビジネスとして成功しているか、これからまだ成長する可能性があるかと見積もることが必要です。ベンチャー企業への投資などの時の判断基準として投資家の間でよく用いられています。

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なぜユニットエコノミクスが重要なのか

ユニットエコノミクスによって顧客1人あたりの採算性を調べるのはなぜ重要なのでしょうか。サブスクリプションモデルの特徴と合わせて解説していきます。

サブスクリプションモデルとユニットエコノミクスの親和性

サブスクリプションでは顧客と長期的関係を築いて、顧客1人から継続的に収益をあげるという考え方が重要になります。そのため、サブスクリプションは従来の「販売数」ではなく「顧客数」が売上に直結します。したがって、顧客1人あたりの経済性を評価するユニットエコノミクスが適用しやすいというわけです。

サブスクリプションモデルのキャッシュフロー特性

サブスクリプションモデルにおけるユニットエコノミクスの重要性を考えるうえではキャッシュフローについて理解しておくことが必要です。 CAC(顧客1人あたり獲得コスト) をキャッシュアウト、ある顧客の毎月の収益から1人あたりの維持管理コストを引いた額をキャッシュインとします。すると顧客1人に対するキャッシュの動きは下のようになります。

サブスクリプションにおける顧客1件当たりのキャッシュの動き

従来の売り切り型モデルでは、売れた瞬間に製造原価と販売コストを回収するという特性になっています。 一方サブスクリプションでは、新規顧客獲得時には赤字であり、その後時間をかけて獲得コストを回収、そして利益となります。 画像の例は、契約時にキャッシュアウトとして計上し、その後10ヶ月かけてCACを回収していることを示しています。

ユニットエコノミクスで評価しないとどうなるのか

キャッシュの動き(従来の会計基準)だけではサブスクリプションビジネスの健全性を判断できないことがわかりました。顧客数が増えて事業として順調に成長していたとしても、 大幅な赤字事業と判断されてしまいます。

そこで、ユニットエコノミクスが指標として役立ちます。ある顧客が契約開始から終了までにもたらす利益であるLTVとCACの関係を見ることで、一時的な赤字に左右されない、成長可能性の判断が可能になります。逆に、売上・利益が順調に伸びていたとしても、その時のユニットエコノミクスが不健全な数字であれば、数字を改善しない限り、いずれ採算がとれなくなり事業として成り立たなくなります。

また、サブスクリプションのスタートアップは資金力が企業存続の命運を分けます。投資家・VCなどから継続的に資金を調達するためにも、ビジネス拡大を急ぎすぎず、健全なユニットエコノミクスを維持しましょう。

自社サービスのユニットエコノミクスを確認してみる

ユニットエコノミクスを活用するうえで重要なこれらの四つの概念と計算方法がわかったところで、実際にユニットエコノミクスを確認してみましょう。ユニットエコノミクスを計算することでビジネスの健全性を評価することができます。健全かどうかを判断する基準や新規サービスを開始後すぐの数値の傾向などについて紹介するので参考にして下さい。

健全かどうかの基準は「LTV /CAC > 3」

ユニットエコノミクスが健全と言われるのは冒頭で述べたようにLTV/CAC>3という計算式が満たされている状態を指します。言い換えればLTVがCACの3倍以上になっていればビジネスは健全と判断できるのです。なぜ「LTV/CAC>3」が健全なのかと疑問に思う人もいるでしょう。今まで紹介してきた四つの指標を用いると次のような関係式が成り立ちます。

LTV = ARPA / 解約率
CAC = ARPA × (CAC回収期間)

これらを使ってユニットエコノミクスを計算すると以下のようになります。

LTV/CAC = 1 / {(解約率)×(CAC回収期間)}

ここで、一般的なCAC回収期間の目安が12ヶ月以内、月間の解約率の目標が目安3%以内と考えると
LTV/CAC=1/(0.03×12)=2.8
という値に落ち着くのです。これが3以上の値が健全と評価できる根拠となっています。

このような合理的な根拠があることから、LTV/CAC>3を達成できればビジネスが現状の顧客獲得方法を続けることで成長できると考えることができます。優良なSaaS企業はLTV/CAC>3を満たすようにビジネスを展開していくことにより成功している場合がほとんどで、よく知られているファイル共有サービスのDropboxなどが典型例として挙げられます。

ただ、LTV/CACが高すぎるのも望ましいとは言えないので注意しましょう。LTV/CACが高い状況は顧客獲得にかけるコストが少な過ぎていることを意味している可能性があるからです。製品やサービスの価値が高いにもかかわらず、十分なマーケティングができていないためにもっと事業を急速に拡大できるはずが小規模に止まってしまっていることを示している場合もあるのです。LTV/CACは3よりもやや大きいという程度を維持するのが合理的な判断と言えるでしょう。

サービス開始直後は低くでるのは仕方がない

新規サービスを立ち上げたときにもユニットエコノミクスを考えるのは大切ですが、たとえ良いビジネスだったとしてもLTV/CAC>3は必ずしも満たされない可能性があるので注意しましょう。立ち上げたサービスが収益になるまでには一般的には6ヶ月から12ヶ月くらいはかかるので初期段階ではLTVが低く、CACも高くなってしまいやすいのです。

また、サブスクリプションビジネスにおける初期の顧客はアーリーアダプターと呼ばれる流行に敏感で、自ら情報収集をして申し込みをする人が多く、LTVも高くなる傾向があります。さらに、一般的にはチャネルを使えば使うほど新規顧客の獲得コストが高くなってCACが悪くなることも少なくありません。このような兼ね合いがあることからサービス開始直後のLTV/CACの値は長期的な観点でのビジネスの収益性を判断するにはあまり信頼性がない場合が多く、半年から一年くらいは様子を見ることが必要になっています。

ユニットエコノミクスが悪い時の対処法

ユニットエコノミクスを計算してみてビジネスの状況が悪いとわかったらどうしたら良いのかと不安になるでしょう。ユニットエコノミクスが悪い時にはどのような対処が有効なのでしょうか。LTVを上げる、CACを下げるという観点を基本にしてどんな対策を立てられるのかを理解しておきましょう。

LTVを上げる:顧客分析をして顧客ごとに最適なアプローチを

LTVを上げてユニットエコノミクスを向上させる方策としてまず挙げられるのがCRM施策を打ち出す方法です。顧客ごとに最適なアプローチをしていくことで、ずっと契約を継続してもらえるようになると考えられます。顧客分析をしてどのようなアプローチを取るのが効果的なのかを考えてみるのが重要です。顧客によってどのようなコミュニケーション戦略が有効かが異なり、製品やサービスの種類によってもどんな形で顧客にマーケティングするのが効果的かは違います。顧客ごとに適したコミュニケーションを図ることで顧客ロイヤリティの向上が見込めるので、効果測定をしながら最適なアプローチを模索してみましょう。

LTVを上げる:カスタマーサクセスの充実化

サブスクリプションビジネスでLTVを上げるためには解約率を下げるという考え方が重要になります。顧客がどんな時に解約してしまうのかをよく考えてみましょう。顧客が離れる原因として多いのは実は製品やサービスの内容ではありません。それを提供している人の方に問題があって顧客が離れていってしまっていることが多いのです。LTVを上げるためには顧客の声をヒアリングして製品やサービスの改善に生かしたり、顧客が製品やサービスを利用したときのアフターフォローをしたりするのが効果的です。カスタマーサポートを充実させるなど、カスタマーサクセスを重視して事業を展開するようにしましょう。

CACを下げる:広告費の最適化

ユニットエコノミクスを健全にするためにCACを下げようと考えた場合には無駄なコストをかからないようにするのが重要になります。新規顧客獲得のための広告費を見直して最適化を試みるのは合理的なアプローチでしょう。リスティング広告などを使ったウェブマーケティングは比較的広告費を抑えやすいのは確かですが、有料広告で継続的な支払いが必要になることは事実です。有料広告の見直しをしてコストパフォーマンスの高いものだけに限定したり、そもそも有料広告をやめてしまってオーガニックの顧客獲得を目指したりするのが良い方策でしょう。

特にオーガニックの顧客獲得を図って成功することができれば、長期的にマーケティングコストを大幅に抑えられます。ブランディングなどのために一時的に大きなコストがかかることもありますが、成功すると他のサービスを提供する時にも広告費をあまりかけずに市場を広く獲得できる可能性があるのが魅力です。

CACを下げる:CVR(コンバージョン率)アップ

CACを下げるための考え方としてCVRを上げることも挙げられます。CVRはコンバージョン率と言われる指標で、サブスクリプションビジネスでは広告などによって顧客獲得を目指した時に、その広告ページに到達した人のうちの申し込みをした人の割合を指します。CVRを2倍にすることができれば獲得できる顧客数は2倍になって、CACは1/2にすることが可能です。

CVRを上げるには色々なアプローチがありますが、まずはアクセスするユーザーを厳選できるようにするために検索語句や設定キーワードを確認して最適化する方法が挙げられます。ウェブ解析ツールを使用するとユーザーのアクションを数値的に評価できるので最適化に役立つでしょう。ウェブ解析ツールを使えば、どこを見ている時にユーザーが脱離してしまっているのかなども解析できます。特にコンテンツマーケティングを導入する時には最適化に欠かせないツールです。ランディングページを作って潜在顧客を見込み顧客に転換させる試みは有効ですが、効果を発揮させるためにはこのような最適化をすることが必要になります。

一方、ターゲットを明確化し、その嗜好に合わせてピンポイントで広告を出すのも効果的でしょう。ユーザーの属性ごとに異なる広告の仕方をするのも良い方法です。また、インパクトのあるコンテンツを盛り込むことでユーザーの心を動かすのも重要になります。コンテンツの工夫はCVRに大きな影響を及ぼすので、ターゲットに合わせて内容を考えるようにしましょう。

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まとめ

ユニットエコノミクスはサブスクリプションビジネスが事業として成功できる形になっているかを評価するうえで重要な役割を果たします。収益ベースで考えると事業拡大が失敗につながるようなこともないわけではありません。ユニットエコノミクスを正しく算出して評価し、事業の先読みをして早い段階から正しい施策を立てて事業を推進していきましょう。

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